はじめに
誰もがいずれは最期を迎えます。自分が亡くなったあとも家族は幸せに暮らしてほしい、世話になった人にお金を贈与して恩返しをしたいなど、自分の財産はできるだけ自分の思い通りに譲り渡したいという人が多いのではないでしょうか。こうした《思い》をかなえるのが遺言なのです。
遺言は自分の《思い》を文章にこめて、残された人々に伝える重要なメッセージです。
75歳以上で遺言を作成したことがある人は11.4%(55歳~74歳平均5.7%)、遺言を作成したいと考えている人は38.0%(55歳~74歳平均33.2%)となっており、年齢が高くなるにつれて遺言の必要性についての意識は高くなってきているようです。
*平成29年法務省調査「我が国における自筆証書遺言に係る遺言書の作成・保管等に関するニーズ調査・分析業務 報告書」
このように遺言の必要性に対する意識は高まっているのですが、どんな場合に遺言を書いておけばいいのか?また、どのように書けばいいのか?について法律の定めに従って遺言を作成するためには正確な知識が必要になってきます。
この記事では、特に遺言を作成する必要性が高い下記のような場合について、詳しく図表を入れて解説をしています。
1、子供のいない夫婦で、妻(夫)にだけ遺産を渡したい。
2、家業を子の1人にだけ継がせたい。
3、事実婚(内縁)の妻子に遺産を渡したい。
4、介護をしてくれた息子の妻に遺産を渡したい。
5、世話になった人、団体などに遺産を渡したい。
6 、配偶者や子がいない一人暮らしなので、自分が亡くなった後に不安がないようにしたい。
(1) 子 供のいない夫婦で、妻(夫)にだけ遺産を渡したい。
遺言がなければ、相続は民法の定める方式(法定相続)に従うことになります。
子がいない夫婦の場合で、親も既にいないとなると兄弟姉妹が相続人となり、妻(夫)の相続分は4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1となります。
普段から付き合いのない遠方にいる兄弟姉妹との相続手続きは残された妻(夫)に大きな負担となります。また妻(夫)の老後の財産である相続財産の一部を兄弟姉妹が相続することになってしまいます。
このような場合は、妻(夫)に相続させる旨 を遺言しておくことで、すべての遺産を妻(夫)に渡すことができます。

(2) 家業を子の一人にだけ継がせたい
例えば、遺言者が株式会社を経営しているケースでは、妻と子供3人が相続人になるような場合が想定されます。長男に会社を継がせたい場合に株式や会社資産などを法定相続どおりに配分すると、経営が成り立たなくなる可能性があります。だからといって長男にだけ渡すと、他の子が不満を持つことになるでしょう。家族間でトラブルにならないように「遺留分」に配慮しつつ遺言をすることでスムーズな相続ができます。*遺留分とは法定相続人(兄弟姉妹除く)の最低限の遺産取得分のことです。

(3) 事実婚の妻子に財産を残したい。
法律上の正式な婚姻をしていない夫婦は、相続において法律上の保護を受けられないことになっています。正式な婚姻とは婚姻届けを市区町村に提出して受理してもらっている状態のことです。
何十年も一緒に住んでいても、内縁の妻は夫の財産を相続する権利がありません。前妻との婚姻関係が続いている場合は、前妻からの相続の主張に対して内縁の妻は法律上保護されないので何も主張することができません。
このような場合には、内縁の妻には遺言で「遺贈」をすることで、財産を渡すことができます。又、内縁の妻との間の子については遺言で「認知」をすることで相続権を得ることができます。
*遺贈とは遺言によって財産を特定の方に相続させることです。

(4) 介護の世話をしてくれた息子の妻に財産を残したい。
例えば、長男のの家族と同居しておりその妻にずっと介護をしてもらっていたような場合、長男以外の子の遺産割合を減らして、本来であれば相続の権利のない長男の妻にも遺産を渡してやりたいと考える場合もあるでしょう。このような場合は遺言で長男の妻の寄与分を明示して本人に遺贈するか、長男に厚く譲る旨を記載すればよいでしょう。
(5) 世話になった人、団体、法人などに渡したい。
遺言者は、自ら所有する財産を相続人以外の者に譲渡することも自由にできます。例えば、大変世話になった他人、学校、福祉法人などに遺産を渡したい場合は、遺言にその旨を記載しておけば配分することができます。この場合には、法定相続人の遺留分を侵害しないようにしなければなりません。

(6) 配偶者や子がいない一人暮らしで、自分の亡くなった後の遺産分割や手続きが不安。
一人暮らしで両親も他界しており他に相続人がいない場合には、自分の財産配分や亡くなった後の葬儀等の手続きについて不安が残ります。このような場合には、特定の人などに葬儀の実施やその後の手続きなどを依頼する代わりに、財産を遺贈することを遺言に記載することで遺言者本人の思いを実現することが可能となります。ただ、生前に遺贈する相手と話し合っておくことが大切です。又、遺言が確実に執行されるように遺言執行者を特定しておくことも重要です。

以上のように、特に遺言を書いた方がよい場合を説明しました。ただこれ以外にも様々なケースがあります。
遺言についての不明点や費用などについてもお気軽にご相談ください。