建設業許可を受けている事業者様は、毎年の決算が終わったあと、事業年度終了後4ヶ月以内に「決算変更届」を提出する必要があります。兵庫県の案内でも、毎年事業年度が終了したときは、建設業法第11条に基づき変更届けを許可行政庁へ提出する必要があるとされています。
例えば、決算日が3月31日の会社であれば、提出期限は7月31日までです。
決算変更届は、税務署に出す決算申告とは別の手続きで、建設業許可を維持するために毎年必要になります。
決算変更届けで提出する主な書類
法人の場合
・表紙・変更届出書(別紙8)
・工事経歴書(様式第2号)
・直前3年の各事業年度における工事・施工金額(様式第3号)
・貸借対照表(様式第15号)
・損益計算書・完成工事原価報告書(様式第16号)
・株主資本等変動兼山椒(様式第17号)
・注記表(様式第17号の2)
・事業税納税証明書(知事許可の場合)
・事業報告書(株式会社の場合)
兵庫県の公式ページでも、決算変更届の添付書類として、工事経歴書、直前3年の工事施工金額、納税証明書、法人の場合の貸借対照表、損益計算書及び完成工事原価報告書、株主資本等変動計算書、注記表などが掲載されています。
個人事業主の場合
・表紙・変更届出書(別紙8)
・工事経歴書(様式第2号)
・直前3年の各事業年度における工事・施工金額(様式第3号)
・貸借対照表(様式第18号)
・損益計算書(様式第19号)
・事業税納税証明書(知事許可の場合)
まず用意する書類
書類を書き始める前に次の書類を揃えると作成しやすくなります。
・税理士さん作成の決算書(財務諸表の作成に使用します)
・法人税。所得税の申告書の控え(売上・利益・決算期の確認)
・総勘定元帳(完成工事原価、兼業工事原価の確認)
・工事毎の請求書・契約書・台帳(工事経歴書の作成)
・県税事務所の納税証明書(添付書類として提出)
特に大切なのは、税務申告用の決算書を、そのまま建設業許可用に書き換える必要があるということです。建設業の決算変更届では、単なる「売上高」ではなく、次のように区分します。
税務上の表現 建設業許可での表現
売上高 完成工事高・兼業事業売上高
売上原価 完成工事原価・兼業事業売上原価
仕掛品 未成工事支出金など
外注費・材料費 完成工事原価の内訳
表紙・変更届出書の書き方
まず、兵庫県の様式から表紙・別紙8を用意します。兵庫県の公式ページでは、決算変更届用の表紙として「表紙(別紙8)」が掲載されています。
記入する主な内容は次のとおりです。
・許可番号(許可通知書に書かれている番号を記入)
・照合・名称(会社名又は屋号を記入)
・代表者氏名(法人は代表取締役、個人は事業主名)
・主たる営業所の所在地(許可を受けている営業所の所在地)
・事業年度(例:令和6年4月1日~令和7年3月31日まで)
ここで間違えやすいのは、税務申告書の本店所在地と、建設業許可上の営業所所在地が違う場合です。兵庫県Q&Aでは、登記上の所在地と実際に営業している営業所所在地が異なる場合、実際に営業を行っている営業所が建設業法上の営業所に該当し、所在地欄は登記上・事実上の所在地を二段書きする例が示されています。
工事経歴書の書き方
工事経歴書は決算変更届出の中でも一番つまずきやすい書類です。
工事経歴書は、許可を受けている建設業の種類ごとに作成します。たとえば「内装仕上工事業」の許可を受けている場合は、内装仕上工事業について工事経歴書を作成します。複数の業種で許可を受けている場合は、原則として業種ごとに分けて作成します。
工事経歴書に書く主な項目
・注文者(元請・発注者を書く)
・工事名(○○内装工事、○○改修工事など)
・工事現場のある都道府県・市町村(兵庫県宝塚市など)
・配置技術者(主任技術者など)
・請負代金の額(その工事の請負金額)
・着工年月(工事を始めた年月)
・完成または完成予定年月(完成した年月)
・元請・下請の別(元請か下請かを記入)
工事経歴書の考え方
工事経歴書には、決算期中に完成した工事と年度末に完成していない工事を記載します。
経営事項審査を受けない場合の記入
・主な完成工事について、請負代金の大きい順に記載し、それに続けて、主な未完成工事について請負金額の大きい順に記載します。
・下請け工事については「注文者」の欄には、注文者の商号又は名称を記載し、工事名の欄には下請けの工事の名称を記載します。この会社の場合では○○内装工事などの名称となります。
・「注文者」及び「工事名」に記入に際しては、その内容により個人の氏名が特定されないように「A」「A邸内装工事」などの アルファベットを使用して記載します・
・「元請又は下請けの別」を記載します。
・「JVの別」は共同企業体で行った工事について「JV」と記載します。
・「配置技術者」の欄には氏名、主任技術者、管理技術者の別を✔します。
・「請負代金の額」を記載します。
・「着工年月」「完成又は完成予定年月」をそれぞれ記載します。
・「小計」はページ毎の完成工事の合計並びに、「うち元請け工事」は元請け工事金額を記載。
・「合計」は、最終ページまでの全ての完成工事、及び元請工事の額を記載します。
工事がない場合
その年度に工事実績がない場合でも、工事経歴書は省略できません。兵庫県Q&Aでは、当該年度に完成工事高がない場合でも、工事実績がない旨を記載したものを作成するとされています。また、設立直後で実績がない場合でも、工事経歴書と直前3年の工事施工金額は必ず添付し、「新規設立のため実績無し」等と記載すると案内されています。
注意点
1件の請負契約を、都合よく複数の工事に分けて記載することはできません。兵庫県Q&Aでも、1件の請負契約を分割して複数の工事経歴として計上することはできないとされています。
直前3年の各事業年度における工事施工金額の書き方
この書類は、過去3年分の完成工事高を、建設業の種類ごとにまとめる書類です。
ここでいう「事業年度」とは、申請時の直前の決算期(個人は12月31日)から起算して過去3年間の事業年度をいいます。
・「注文者の区分」は「元請」・「下請」に分け、「元請」については「公共」・「民間」に分けて記載します。
・「許可に係る建設工事の施工金額」の欄中、「 工事」欄には施工金額の有無に係わらず許可を受けようとする建設工事の種類を記載します。
・「その他の建設工事の施工金額」欄は、許可を受けていない建設工事の施工金額を記載します。
・「合計」「計」の金額は、財務諸表の完成工事高と一致します。
財務諸表の書き方
決算変更届では、税理士さん作成の決算書をもとに、建設業許可用の様式に転記します。
法人の場合は、主に次の書類を作ります。
書類 内容
貸借対照表 資産 負債・純資産を書く
損益計算書 売上 原価・利益を書く
完成工事原価報告書 材料費・労務費・外注費・経費を書く
株主資本等変動計算書 資本金・利益剰余金の増減を書く
注記表 会計方針などを書く。株式会社、持分会社によって記載する項目に差がある。
兵庫県の公式ページでも、法人の場合の決算変更届書類として、貸借対照表、損益計算書及び完成工事原価報告書、株主資本等変動計算書、注記表が掲載されています。
完成工事原価報告書の書き方
完成工事原価報告書では、工事にかかった原価を次のように分けます。
区分 内容
・材料費 工事に使った材料代
・労務費 現場作業員の人件費
・外注費 下請業者への支払い
・経費 現場経費、消耗品費、運搬費など
注意点は、会社全体の経費をすべて完成工事原価に入れないことです。
事務所家賃、事務員給与、通信費、広告宣伝費などは、内容によって販売費及び一般管理費に入ることが多いです。
また、兼業売上がある場合は、売上だけでなく原価も「完成工事原価」と「兼業事業売上原価」に分ける必要があります。
納税証明書の取り方
兵庫県知事許可の場合、決算変更届には事業税納税証明書を添付します。兵庫県の公式ページでも、知事許可の場合の納税証明書として「事業税納税証明書(1)」が案内されています。
法人であれば法人事業税、個人であれば個人事業税の納税証明書を取得します。
取得先は、通常、管轄の県税事務所です。
ここでの注意点は、税務署の「法人税の納税証明書」ではなく、兵庫県知事許可の場合は原則として県税の事業税納税証明書を使うことです。
提出前のチェックポイント
提出前に、次の点を確認してください。
チェック項目 確認内容
提出期限 決算終了後4か月以内か
許可番号 許可通知書と一致しているか
事業年度 決算書と一致しているか
工事経歴書 許可業種ごとに作成しているか
「合計」「計」の金額は、財務諸表の完成工事高と一致
3年分施工金額 過去3年分が正しく入っているか
財務諸表 建設業用の様式に転記しているか
納税証明書 事業税の証明書を取得しているか
変更事項 役員・営業所・専任技術者等に変更がないか
決算変更届と同時期に、使用人数、令3条の使用人、定款、健康保険等の加入状況などに変更がある場合は、追加で届出が必要になることがあります。兵庫県の公式ページでも、毎事業年度終了後4か月以内の項目として、決算変更届のほか、使用人数の変更、令3条の使用人一覧表の変更、定款の変更、健康保険等の加入状況の変更が並んで案内されています。
よくある間違い
間違い1:税務申告書をそのまま提出すればよいと思っている
税務申告書と建設業許可の決算変更届は別物です。
税理士さんの決算書をもとに、建設業許可用の様式へ作り直します。
間違い2:工事経歴書を1枚だけ作ればよいと思っている
工事経歴書は、許可業種ごとに作成します。許可を受けている業種が複数ある場合は、それぞれの業種で工事の有無を確認します。兵庫県Q&Aでも、許可に係る建設工事の種類ごとに作成するとされています。
間違い3:工事がないから工事経歴書を出さない
工事実績がない場合でも、省略はできません。兵庫県Q&Aでは、工事実績がない場合でも、工事実績がない旨を記載した工事経歴書を作成するとされています。
間違い4:売上をすべて完成工事高にしている
建設工事以外の売上がある場合は、兼業事業売上高に分ける必要があります。
工事にあたるかどうかは、請求書、契約書、作業内容を見て判断します。
間違い5:納税証明書の種類を間違える
兵庫県知事許可では、原則として事業税納税証明書を添付します。法人税や消費税の納税証明書と間違えないよう注意が必要です。
自分で作成する場合のおすすめ手順
自分で決算変更届を作る場合は、次の順番で進めると作りやすいです。
手順1:兵庫県の様式をダウンロードする
まず、兵庫県のホームページから、決算変更届に必要な様式をダウンロードします。兵庫県の公式ページには、工事経歴書、直前3年の工事施工金額、法人・個人別の財務諸表様式などが掲載されています。
手順2:決算書を確認する
税理士さんからもらった決算書を見て、売上高、売上原価、利益、資産、負債、純資産を確認します。
手順3:売上を「工事」と「兼業」に分ける
請求書や売上台帳を見て、建設工事にあたる売上と、それ以外の売上を分けます。
手順4:工事経歴書を作る
完成した工事を業種ごとに整理し、請負金額の大きいものから順に記載します。
工事件数が多い場合は、すべてを細かく書くのではなく、様式や記載要領に沿ってまとめます。
手順5:財務諸表を作る
税務決算書の数字を、建設業許可用の貸借対照表・損益計算書に転記します。
このとき、完成工事高、兼業事業売上高、完成工事原価、兼業事業売上原価の分け方に注意します。
手順6:納税証明書を取得する
県税事務所で事業税納税証明書を取得します。
手順7:提出先に提出する
書類がそろったら、主たる営業所を管轄する土木事務所などへ提出します。提出前に、最新の提出先・部数・受付方法は兵庫県の案内で確認してください。
まとめ
兵庫県の決算変更届は、毎年の決算後に必ず必要となる手続きです。
作成のポイントは、次の5つです。
決算終了後4か月以内に提出する
工事経歴書は許可業種ごとに作成する
工事実績がなくても書類は省略しない
売上を完成工事高と兼業売上に分ける
税務決算書を建設業許可用の財務諸表に組み替える
決算書、請求書、工事台帳、納税証明書がそろっていれば、自社でも作成は可能です。
ただし、完成工事高と兼業売上の区分、完成工事原価の分け方、直前3年の各事業年度における工事施工金額との整合性で迷う場合は、早めに専門家へ確認した方が安心です。